弓取り式の存在は知っていても、じっくり見たことがない、意味もよくわからないという方は多いと思います。
どんな力士が選ばれるの?
報酬はあるの?
所作にはどんな意味があるの?
いろいろな疑問を解決!
場所中、結びの一番のあとに毎日行われている弓取り式に注目し、由来や意味をご紹介します。
弓取り式|力士は給料や手当はもらえる?意味や選び方とは?独特の所作には邪気を払い、土俵を清浄化する願いが込められています!
弓取り式とはどんな儀式?意味や由来を紹介します
<夏巡業・KITTE場所>聡ノ富士による弓取り式。 #sumo pic.twitter.com/APYnXDnkU9
— 日本相撲協会公式 (@sumokyokai) August 30, 2016
大相撲中継の最後に、化粧まわしをつけた力士が、行司さんから長い弓を受け取り、儀式を行っているのが映りますね。
あれが弓取り式です。
大相撲の全取り組みが終わった後、打ち出しの櫓太鼓が鳴る前に行われます。
弓取り式とは、本来、その日の結びの一番に勝った力士が勝者の舞を行うものでした。
それが勝者本人ではなく、所作を習得した力士が担当し、勝った力士をたたえるようになりました。
現在は場所中、毎日、弓取り式がありますが、約70年前までは千秋楽にだけ行われていたそうです。
もし大相撲観戦に行く機会があったら、ぜひ、最後の弓取り式まで見てみてください。
弓取り式の力士が四股を踏む際には、観客が「よいしょ~!」と動作に合わせて掛け声を上げて盛り上げます。
一緒に「よいしょ~!」と叫べば、好角家(相撲通)の仲間入りをした気分を味わえますよ。
弓取り式の力士は誰でもなれるわけではなかった?! その選び方とは?
<初日の様子>弓取り式、春日龍。 #sumo #相撲 pic.twitter.com/TcVdOGtari
— 日本相撲協会公式 (@sumokyokai) May 13, 2018
お相撲さんになれば誰でも弓取り式を担当する機会があるのかなぁ、と私は思っていたのですが、そうではないようです。
弓取り式を担当する力士の選び方とは、どういうものでしょうか。
次にご紹介します。
《原則的な選考の条件》
1、横綱がいる部屋または同じ一門の力士
(横綱不在の場所は大関がいる部屋または同じ一門の力士)
2、幕下以下の力士
3、まげが結える力士
もともと弓取り式は、結びの一番に勝った力士が勝者の舞をするのが起源でしたね。
結びの一番を務めるのは大抵、最高位の横綱です。
横綱に成り代わる者として、同部屋か同じ一門の力士から選ばれます。
幕下以下というのはあくまでも慣例で、過去には関取になっても弓取り式を務めた力士がいます。
弓取り式を行う力士は、大銀杏を結い、日本相撲協会所有の化粧まわしをつけて土俵に上がることになっています。
まげが結えない入門したばかりの力士は、選ばれないということですね。
弓取り式の力士の所作はいつも同じではなかった! 動作の意味を知ると、もっと面白い!
<夏巡業 KITTE場所>聡ノ富士による弓取り式。これで夏巡業の日程はすべて終了しました。 #sumo pic.twitter.com/zy5eNOm1FW
— 日本相撲協会公式 (@sumokyokai) August 29, 2017
弓取り式の動作は、毎回、同じではないことをご存じですか?
弓取り式担当の力士は向正面に控えています。
そして、結びの一番で、東方の力士が勝てば東から土俵に上がります。
西方の力士が勝てば西から上がるわけですね。
行司さんから弓を受け取り、片手で持ち、頭上で回し、左右に八の字に振り回します。
途中、弓で土俵をすくうような所作があります。
ここでも結びで勝った力士が東方なら東からすくうような動作を行い、勝った力士が西方なら西からすくような動作を行います。
そして弓を肩に担いだ格好で四股を踏みます。
これら一連の動作には意味があります。
弓で邪気を祓い、四股を踏んで土俵を清浄に整えて、翌日の相撲につなげるのです。
2010年3月場所の弓取り式では、こんなハプニングがありました。
担当の男女ノ里(みなのさと)が弓取り式の途中で弓を落としてしまい、本来なら足で拾わなくてはならないのに、2回試してもできなかったため、手で拾ってしまったそうです。
ちなみに落とした弓を足で拾うのは、土俵上に手をつくことは負けを意味し、縁起が悪いとされているからです。
男女ノ里は、実は2008年にも弓を落としてしまったことがあります。
その時は作法どおりに、足の甲にのせて弓を跳ね上げ、見事、キャッチできたそうですよ。
弓取り式を任された力士は、足で弓を拾う練習もしているのでしょうか?
どれだけ練習しても、私にはとてもできそうもありませんが…。
弓取り式|力士は給料や手当はもらえる?
弓取り式の力士はお給料をもらえるの?場所手当に加え、一場所ごとに報酬が得られます
<三日目の様子>
本場所の土俵で初めて弓取式を務めた将豊竜。#sumo #相撲 #一月場所 #初場所 #国技館 #2020年 pic.twitter.com/lmiOldmSSz— 日本相撲協会公式 (@sumokyokai) January 14, 2020
大相撲の世界で、月給が支給されるのは十両以上に限られます。
幕下以下の力士となると、給料はなく、年に6回支給される場所手当のみと聞きます。
ちなみに幕下力士の場所手当は15万円だとか。衣食住が保証されているとはいえ、厳しい数字ですよね。
それが弓取り式の力士に選ばれると、報酬は1場所で9万円となります。
これは手当の少ない幕下以下の力士にとってはありがたいはずです。
しかも、大銀杏と化粧まわしの晴れ姿で、伝統ある弓取り式を担当できるとなると、ふつうなら名誉なことに思えます。
ところが、相撲界には「弓取り式を行った力士は関取になれない」というジンクスがあるんです。
親方から「弓取り式を担当してくれ」と言われた力士は、「やったぁ!」とは素直に喜べないかもしれませんね。
私はジンクスが気になるほうなので、弓取り式に指名されたら、「弓取り式をするせいで、関取になれないかも」と複雑な気持ちになりそうです。
でもジンクスは絶対ではなかった!
1990年5月場所まで弓取り式を務めた九重(ここのえ)部屋の巴富士(ともえふじ)は、1992年小結になりました。
朝青龍(あさしょうりゅう)が横綱昇進後、弓取り式を担当した皇牙(おうが)は、十両に上がっても続けました。
現在、1年以上弓取り式を務めている幕下の将豊竜(しょうほうりゅう)も、十両が目指せるまで番付けを伸ばしています。
「弓取り式を担当した力士は出世する!」
将来は、そんな逆のジンクスができると、担当する力士は嬉しいでしょうね。
(ライター:松岡那知さん)